人に何かを説明するときに、しどろもどろになったり、とりとめなくだらだらしたり、よくわからないものになってしまったという経験はないでしょうか?
自分の考えが伝わらない、意見が通らない そんな場合はこの内なる言葉を磨くこと良いかもしれません。
お勧めする本は「言葉にできる」は武器になる。です。
著者は「バイトするなら、タウンワーク。」「世界は誰かの仕事でできている。」などを生み出した、理系出身、過去の読書習慣なしといったユニーク経歴の電通コピーライターの梅田悟司さんです。
言葉が意見を伝える道具ならば、まず、意見を育てる必要があるのではないか?
言葉はコミュニケーションの手段ではあるが、そのコミュニケーションとして「外に向かう言葉」を磨くには、自分の考えを形作る「内なる言葉」を育てることが重要と説いています。
伝わり方のレベル

ひとに何かを伝えたい時の伝わり方はこの4つに分けられます。
この最高レベル「共感・共鳴」で、「人が自ら動く」状態になるというものです。
しかし、このレベルで伝えるのはとても難しく、理解はされるものの、納得や共感がされないケースが多いのです。
このレベルの伝え方の鍵を握っているのが内なる言葉になります。
内なる言葉とは?
「言葉にできない」=「言葉にできるほど考えられていない」ということであり「考える」とは内なる言葉を発していることに他なりません。
「考える」は言語化することであり、言語化できていないことは考えていないということを意味しています。
言葉の重さ・深さはこの内なる言葉の育て方にかかっているのです。
これから話そうとすることを自分なりに完全に理解していないと、話がしどろもどろになったり、とりとめなくだらだらしたり、よくわからないものになってしまうことがあります。話を要約することもままなりません。
このような経験がある場合、それは考えられていないことからくるものであり、内なる言葉が発せられていない状態、内なる言葉が磨かれていない状態となっています。
言葉を生み出すのには2つのプロセスがあるといいます。
- 自分の意見を育てる
- 意見を言葉に変換する
「自分の意見を育てる」が内なる言葉を磨くことであり、「意見を言葉に変換する」が外に向かう言葉になります。
内なる言葉を磨くための思考法とは?
思考と記憶を切り離すことがポイント
頭の中の記憶域と思考域が入り混じると、モヤモヤした状態になりますが、それは内なる言葉が「重なる、溢れる」そして「漠然となる」これがモヤモヤの原因です。
そのため、頭の中を紙に書き出すことでこの記憶域を減らして思考域を増やすことができるのです。
ちなみに、私がこれまでお会いした方々の中でも頭が良いと感じた人のほとんどはノートやメモに何らか言葉を書いている人でした。そうすることで思考を管理しているのかもしれません。
7つのプロセスで思考サイクルを作る。
内なる言葉を磨くために大きく3つのポイントで思考サイクルを繰り返します。
- アウトプットする
- 拡散させる
- 化学反応を起こす
具体的にはこの3つのポイントをさらに次の7つのプロセスで進めていきます。
- 書き出す
- 考えを広げる
- 整理する
- 足りない箇所を埋める
- 寝かせる
- 発想を逆転する
- 違うスタンスとる
それぞれのプロセスを説明します。
①書き出す
まず最初にやることは頭の中に浮遊する内なる言葉をA4サイズの一枚の紙や付箋になど外に書き出すことです。
頭の中に浮かんでくるうちなる言葉をどんどん書き出します。
②考えを広げる
次に、書き出された言葉に対して、考える幅、奥行きを広げていきます。
広げ方としては、T字型思考法と呼ばれるものを紹介しています。

書き出された言葉に対して「なぜ?」「それで?」「本当に?」をキーワードに
その言葉の語彙力と解像度を高めていきます。
ちなみに「楽しい」「やりたい」は解像度は低い状態です。
なぜ楽しいのか?なぜやりたいのか?本当にやりたいのか?を考えることで解像度が高くなっていきます。
③整理する
続いて、それまでの主観的な視点から客観的視点に切り替えて、広げた言葉を俯瞰して観察します。
書き出された言葉をグルーピングしながら縦と横ラインで整理していきます。
横が方向性で縦が深さです。

グルーピングした際にはそこに名前をつけることで、方向性がより明確になりさらに考えを深めることにつながります。
④足りない箇所を埋める
ここから視点を拡張していきます。まずは横ライン、足りない方向性を見つけていきます。
続いてそれぞれの方向性に対して考えを深めていきます。
横と縦では見方が違うため、最初は横ラインで俯瞰的に見ていき最後に縦ラインで本質に迫るようなイメージです。
ここで新たに生まれた横ラインの方向性は先のT字型思考法を使って深めて行きます。
この縦と横が内なる言葉の解像度と思考の密度を表すことになります。
⑤寝かせる
ここは広げた・深めた内なる言葉に対して足りない箇所に気づき、埋める作業です。
ここまできた状態で2〜3日寝かします。
時間を空けることでより客観的に見ることができ、抜け漏れが見つかることがあります。
⑥発想を逆転させる
ここからが化学反応を起こさせるプロセスです。
自分の常識や先入観から抜けながら思考を広げるためにこれまでとの視点とは真逆を考えていきます。
できる・できないの「否定的な逆」、本音・建前といった「意味的な逆」、主観・客観の「人称的な逆」など
を真逆の種類として考えていきます。
⑦違うスタンスをとる
最後は、自分とは違う人の視点で考えてみます。
様々な人の立場になって考えることで自分自身の内なる言葉の中に自分以外の内なる言葉が追加され、さらに広く物事を考えられるようになります。
自分の壁を意識して解放するイメージです。
ここまでのプロセスを経ることで内なる言葉は解像度も高まり思考の密度も濃いものになっているでしょう
まとめ
この本の中では、コミュニケーションを料理に例えています。
内なる言葉は「素材」にあたり、外に向かう言葉が「調理」にあたります。いくら調理がうまくても素材が悪いければ美味しい料理にはなりません。素材には自信がないが調理には自信があるという人の料理は食べたくないものです。
内なる言葉という素材をいかに磨けるか、素材しだいでコミュニケーションのレベルが変わります。
この本に書かれている思考のプロセスを身につけ、使いこなして行くことで、自分の考えを人に伝えて、人が「自らが動く」状態を作っていきたいと思います。
なお、本の後半では外に向けた言葉の鍛え方について述べられていますが、この部分はまた別の記事でご紹介します。
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